Seneca

叡智によって、激動の世の中を生き抜こう

『スッタニパータ』における苦行の一場面

『スッタニパータ』では苦行を行う釈尊に対し、悪魔がそれをやめるよう誘惑するシーンがあります。第3章の中です。岩波文庫では「二 つとめはげむこと」講談社文庫のほうは「第二章 奮闘」という名前で紹介されている話です。

非常に興味深いストーリーです。

苦行を行っている釈尊に対し、悪魔が「あなたは死の間近にいる。」と述べていることから、命を削る修行、つまり苦行を行っている様子が描かれています。

悪魔は「命がけで修行して何になる?」と言います。

それに対し、釈尊は苦行で身体が弱るほど、心は清らかになっていくこと、そして死ぬ覚悟で苦行に取り組む覚悟を悪魔に見せつけるわけです。それによって悪魔は姿を消してしまいます。

なかなかアグレッシブな話です。なんせ悪魔に負けて生き延びるよりは、死んだほうがいいと言っているわけですから。

基本的に仏教は平和主義ではありますが、この話は、命を落とす覚悟で修行(苦行)に取り組む大切さが説かれています。

そして、明かに苦行に肯定的な思想が展開されています。

苦行が、悟りを求める修行に不可欠な要素であったことがわかる話です。

これは釈尊の伝記の一部ともいえますから、かならずしも教団の中で命を危険にさらすような苦行が行われていたかどうかはわからないですけども。

千日回峰行のような、命がけで危険な修行も、原始仏教に起源があると考えてもよいのかもしれません。